胃と乳酸菌の関係
なぜ胃に乳酸菌なのか?
従来は胃の中は胃酸があるため胃の中には乳酸菌はいない生息できないと考えられていました。
ただ、近年の研究でもともと人の胃の中に乳酸菌が生息していることや定着できることが分かっており、胃に対して様々な働きをしていることが判明しています。
胃と脳は心身の健康に重要な役割を果たす自律神経により繋がっています。例えば食事の際には、食べ物の情報が脳に送られ、脳のシグナルが自律神経を介して胃に伝わり、胃の動きや胃酸分泌が調節されています。
この自律神経の働きがうまくいかなくなることで、胃酸の分泌過多による胃痛や胃の動きの低下による胃もたれ・食欲不振などがおこり、機能性ディスペプシアの症状が発症します。
また、ピロリ菌感染によっても機能性ディスペプシアのような胃痛・胃もたれ・食欲不振などが起こることも分かっています。
乳酸菌の中には、胃酸の分泌の正常化作用、機能性ディスペプシアの症状改善効果、自律神経の改善効果や抗ピロリ菌作用、を持つものがあり、実際に臨床試験や研究データで機能性ディスペプシアや逆流性食道炎などの症状を改善しているデータが多数あります。
胃と関連する代表的な乳酸菌①LJ88
◆胃痛、胸やけ、胃もたれの原因となる胃酸の過剰な分泌の抑制
乳酸菌LJ88は、胃酸の分泌を促す「ガストリン」というホルモンを作る細胞に働きかけることで、過剰な胃酸の分泌を防止してくれます。
また、必要以上には胃酸分泌を低下させることはなく、正常の状態を保ってくれます
過剰な胃酸の抑制とそれによる胃症状の改善はマウスだけではなく、ヒトでの臨床試験でも確認されています
一日当たり10億個、または100億個の乳酸菌LJ88殺菌体を6週間にわたり毎日摂取することで、有意 な胃食道逆流症関連症状の改善が見られ、胃症状の悪化なく改善した7名では、血中のガストリン(胃酸の分泌を促すホルモン)濃度の有意な減少も確認されました。
※FSSGスコア;Fスケールと呼ばれる問診による指標で、逆流性食道炎の評価に使用されます。スコアが高いほど症状が強くなります。
乳酸菌LJ88の摂取継続に、FSSGスコアの数値が低下=症状の改善を認めています。
◆制酸剤のリバウンドの抑制作用
胃酸を抑える薬を服用していると、やめた際に一時的にリバウンド反応を起こし、胃酸が分泌しやすくなりますが、LJ88を服用することでそのリバウンドが抑えられる可能性が示唆されています。
特に胸やけなどの原因となる逆流性食道炎で制酸剤を使って治療されている方は、薬をやめると再燃することが少なからず見られ、そのような時に乳酸菌の働きによって薬をやめた際のリバウンドが起こりにくくなるのではないかと考えられています。
◆抗ピロリ菌作用
最近TVなどで多く取り上げられている「ピロリ菌」は胃がんを発症する原因の1つと認められていて、胃痛、胃もたれなど様々な胃のトラブルも引きおこします。
このピロリ菌 の働きを弱めてくれるのもLJ88乳酸菌です。 乳酸菌LJ88とピロリ菌を同居させた実験では、ピロリ菌の繁殖がおさえられることが明らかになりました。
胃と関連する代表的な乳酸菌②OLL2716
◆抗ピロリ菌効果
ピロリ菌の除菌療法の際に、この乳酸菌を併用して飲んで頂くことで除菌成功率が10%ほど上回るとの研究結果が分かっています。
出典:Deguchi R et al. Effect of pretreatment with Lactobacillus gasseri OLL2716 on first-lineHelicobacter pylori eradication therapy. J Gastroenterol Hepatol. 2012, 27(5), 888–892
◆機能性ディスペプシアへの効果
乳酸菌OLL2716株入りヨーグルトの摂取により、機能性ディスペプシアの症状(①食後のもたれ感、②早期満腹感(食べ始めてすぐに満腹)、③心窩部痛(みぞおちの痛み)、④心窩部灼熱感(みぞおちが焼けるような感じ))が改善したとの報告もあります。
(出典:Digestion 2017;96:92-102)
またこの乳酸菌が自律神経改善し、胃と脳のネットワークを健全化する可能性を示唆する発表もあり、胃と乳酸菌の関連はますます注目を集めています。
Ohtsu, T., Haruma, K., Ide, Y., & Takagi, A. (2021). The Effect of Continuous Intake of Lactobacillus gasseri OLL2716 on Mild to Moderate Delayed Gastric Emptying: A Randomized Controlled Study. Nutrients, 13(6), 1852.
このように、乳酸菌と胃は密接に関わっており、今後もその働きが更に明らかになってくると考えられ、多くの期待が寄せられています。